短篇小说-要求特别多的餐厅(中日双语译本)

旅游日语在线2018-06-25 18:43:28

宫泽贤治 




  两个年轻的绅士,从头到脚一身英国士兵的装束,肩上扛着亮晶晶的猎枪,身后跟着两只白熊一般大的猎狗,走在深山小径,踏着沙沙作响的落叶,边走边谈着话︰ 

  ‘整个说来,这一带的山都不行啦。连一只鸟一头兽都找不到。真想砰、砰的给他放两枪过过瘾,管他中的是什么东西。’ 

  ‘如果能在野鹿的黄肚皮上,狠狠给他放个两三枪,不知有多痛快。黄鹿大概会先转上几圈,再扑通一声倒在地上吧。’ 

  他们已经走进相当深邃的山中。这深山老林,即使是那个为绅士们当向导的打猎专家,也在一不小心中与绅士们走散了。 
  而且,又因为深邃得令人感到毛骨悚然,两只像白熊一般大的猎狗,竟然同时昏厥倒地,在地面上呜呜哀叫了一会,然后口吐白沫昏死过去。 

  ‘老实说,这下我白白损失了二千四百元。’绅士之一翻翻猎狗的眼皮,查看后说。 

  ‘我损失了二千八百元。’另一个绅士不甘心地歪着头回答。 

  第一个开口的绅士,脸色稍稍转为苍白地凝视着另一个绅士,说︰ 
  ‘我认为我们最好回头。’ 

  ‘好啊,我也感到有点冷,肚子也饿了,正想回头呢。’ 

  ‘那么,我们今天就到此为止算了。反正回程时,可以在昨晚住宿的旅馆,花十元买野鸟带回家就行了。’ 

  ‘对了,那儿也有山兔。反正打的跟买的差不多。那就回头吧。’ 

  可是,他们根本不知道该走哪个方向才能回去。 
  这时刮起一阵飓风,树叶和杂草被刮得沙沙作响,树木也轰隆轰隆喧嚷着。 

  ‘我肚子真饿了,小腹从刚刚开始就疼得我受不了。’ 

  ‘我也是,我连一步都不想走了。’ 

  ‘我也走不动了。唉,真想吃点东西。’ 

  ‘我也真想吃点东西。’ 

  两个绅士在沙沙作响的芒草丛中,你一句我一句的。 

  然后无意间回头一看,竟发现身后有一栋华丽的西式建筑。玄关前挂着一个招牌︰ 

  【RESTAURANT 西餐餐厅︰WILDCAT HOUSE 山猫轩】 

  ‘喂,你看。原来这里还挺开化的。进去看看吧。’ 

  ‘奇怪,这种鬼地方怎会有餐厅?算了,不管怎样总有东西可吃吧!’ 

  ‘那还用说,招牌上不是写得一清二楚吗?’ 

  ‘那我们快进去吧!我已经饿得站不住了。’ 

  两人来到玄关前。玄关是用白色瓷砖砌成的,相当富丽堂皇。 
  入口处是一扇玻璃双扇门,门上用烫金字写着︰ 

  "欢迎光临,各位请进,不必客气。" 

  两人顿时笑逐颜开,说︰ 
  ‘你看!真是老天不负苦心人。今天虽然累了一整天,但最后还是碰到这种好运。这家虽是餐厅,不过可以免费用餐。’ 
  ‘嗯,好像是可以白吃一顿。既然写着不用客气,意思是免费吧。’ 

  两人推门而入。进口处是一道走廊。玻璃窗背面又有烫金字︰ 

  "我们特别欢迎发福的人和年轻人。" 

  两人看到"特别欢迎"的字眼,更是喜形于色︰ 
  ‘喂,我们被列为特别受欢迎的人。’ 
  ‘因为我们既年轻又发福。’ 

  两人顺着走廊往前走,眼前又出现一扇涂着淡蓝色油漆的门。 
  ‘这家餐厅真怪,怎么有这么多门?’ 
  ‘这是俄罗斯建筑。寒冷地带和深山里都是这种建筑。’ 
  两人正要推门而入时,发现门上有黄色字体写着︰ 

  "本店是家要求很多的餐厅,还请各位多多包涵。" 

  ‘看样子这家餐厅客人还不少。在这种深山真是罕见。’ 
  ‘这不稀罕吧!你想想,东京一些大餐厅有几家是在大街上的?’ 
  两人边说边推开门,然后发现门背面又写着︰ 

  "本店要求可能特别多,还请各位忍耐一下。" 

  ‘这到底是怎么回事?’绅士之一皱着眉头。 
  ‘啊,这可能是表示客人太多,叫菜的人多,准备饭菜时要花点时间,请客人原谅的意思吧。’ 
  ‘大概是吧。总之,我真想赶快进房间。’ 
  ‘是啊,然后早点坐到餐桌旁。’ 

  然而,伤脑筋的是,眼前又出现一扇门。门边挂着一面镜子,镜子下摆着一把长柄毛刷。 
  门上用红色字体写着︰ 

  "各位顾客,麻烦请在此梳理头发,并请抹净鞋上的污泥。" 

  ‘这倒合乎情理。刚才在玄关时,我还认为在这种山间的餐厅,大概没什么大不了的。’ 
  ‘这家餐厅倒真讲究礼法,一定是时常有达官显要来这里光顾吧。’ 

  于是,两人遵照吩咐,梳理了头发,并把鞋上的污泥抹净。 
  然后呢?万万没想到刚把刷子放回原处,刷子竟逐渐变成透明,最后竟消失了。 
  再来是一阵飓风飕飕地刮进房里。 
  两人大吃一惊,互相倚偎着,赶忙打开门,闪进下一个房间。他们现在只想快快吃点热腾腾的饭菜,恢复一下体力,否则真不知又会出现什么怪名堂。 

  岂知门里边又出现奇怪的一行字︰ 

  "请把枪支与弹药放在这里。" 

  仔细一瞧,身边果然有一个黑色的柜台。 
  ‘说的也是,总不能背着枪吃饭吧。’ 
  ‘一定是有大人物经常来光顾。’ 
  两人拿下枪支,解下皮腰带,放在柜台上。 

  然后又出现一扇黑门,门上写着︰ 

  "请摘下帽子,脱下大衣和鞋子。" 

  ‘怎么办?脱吗?’ 
  ‘没办法,脱吧。看来里面一定有贵人在。’ 
  两人把大衣和帽子挂在墙上的钉子上,脱下鞋子,光着脚啪嗒啪嗒地走进门里。 
  门背面写着︰ 

  "请把领带别针、袖扣、眼镜、钱包和其他金属类,尤其是尖锐的东西,统统放在这里。" 

  门边,有个涂着黑漆的厚重保险柜,保险柜的门被打开着。旁边还放着钥匙。 
  ‘看来有些菜肴必须用电,所以金属类的东西有危险。尤其是尖锐的东西特别危险。是这个意思吧?’ 
  ‘大概吧!那是说,吃完后在这付账喽?’ 
  ‘也许吧。’ 
  ‘一定是这样的。’ 

  两人摘下眼镜,取下袖扣,全部放进金库,然后锁上钥匙。 
  走了一会,前面又出现一扇门,门前摆着一个玻璃缸。门上写着︰ 

  "请用缸里的奶油涂在您的脸部和手脚上。" 

  两人仔细一看,玻璃缸里果然盛满着奶油。 

  ‘抹奶油干什么?’ 
  ‘这个啊,外面不是很冷吗?可是屋里又热乎乎的,一冷一热容易让皮肤皲裂,抹奶油大概是预防步骤。总之里面一定有个贵人在。搞不好我们能在这地方与某方权贵结识。’ 
  两人忙着把缸里的奶油涂抹在脸上、手上,又脱下袜子,在脚上抹了奶油。可是缸里的奶油仍没用光,只好假装涂抹在脸上而偷偷吃掉。 

  然后再匆匆推开门进入。门里边又写着︰ 

  "奶油都涂抹上了吗?耳朵也抹了吗?" 

  门边另有一瓶小小的奶油。 
  ‘对了,我忘了抹耳朵。好险,差点让耳朵的皮肤皲裂。这里的老板想得可真周到。’ 
  ‘对啊,真得是无微不至。不过说真的,我真想快点吃个东西,只是走来走去都是走廊,真没办法。’ 
  说着,眼前又出现一扇门,门上写着︰ 

  "饭菜立刻就上。 
  不到十五分钟就能吃了。 
  马上就能吃了。 
  赶快在您的头上撒上金瓶中的香水。" 

  门前果然搁着一瓶金光闪闪的香水。 

  两人赶紧拿起香水瓶往头上撒。 
  岂知,这香水的味道闻起来竟像是食醋。 
  ‘这香水怎么很像食醋?怎么回事?’ 
  ‘大概装错了。一定是女服务生感冒鼻子不灵把食醋当香水了。’ 
  两人推门而入。门背面有一行大字︰ 

  "您一定感到要求太多而觉得很烦吧。还请多多包涵。 
  这是最后一项要求。麻烦请在全身涂抹上罐里的盐。" 

  果然,眼前有一只雅致的青陶盐罐。只是这最后一项要求,却也让两人大吃一惊,彼此呆呆望着各自涂抹着奶油的脸。 
  ‘这好像有点不对劲。’ 
  ‘我也觉得有点不对劲。’ 
  ‘所谓的要求多,原来不是客人多订单多,而是餐厅向客人的要求多。’ 
  ‘所以说,我想,所谓的西餐厅,所谓的西洋料理,不是让客人来吃饭菜的,而是把客人当作材料烹调成西洋料理,然后……然后……哦……我……我们……’ 
  讲到此,他全身已哆哆嗦嗦抖颤个不停,无法再讲下去了。 
  ‘那……我……我们……哇--!’ 
  另一个也全身哆哆嗦嗦抖颤个不停,无法再讲下去。 

  ‘快……逃……’ 
  绅士之一哆哆嗦嗦地想拉开身后的门,岂知,门竟纹风不动。 
  走廊尽头还有一扇门,门上有两个很大的钥匙孔,和各被刻成一对银色刀叉的图案。 
  门上另有一行字︰ 

  "真是辛苦各位了。 
  现在一切准备就绪。 
  请进,马上就要开饭了。" 

  不仅如此,钥匙孔还露出两个青色眼睛,骨碌地打着转,正在窥视外面。 

  ‘哇--!’哆哆嗦嗦。 
  ‘哇--!’哆哆嗦嗦。 
  两人吓得抱头大哭。 
  这时门内传来窃窃私语的声音。 

  ‘完了,他们察觉了。都不肯在身上涂抹盐呢。’ 

  ‘那当然啦!都怪老板写的太明显了,最后一项要求又多,又说什么您一定感到要求太多而觉得很烦吧,还请多多包涵之类的。’ 

  ‘管他的,反正老板连一根骨头也不会分给我们的。’ 

  ‘说得也是,可是那两个家伙若不进来,咱们可就得负责任。’ 

  ‘要不要叫他们进来?叫吧叫吧!喂--,客人啊,来坐啊,来坐啊!赶快来啊!盘子都洗好了,青菜也用盐巴揉搓好了,就等你们进来和青菜拌一拌,再盛到雪白的盘子上啦。赶快进来啊!’ 

  ‘喂--!来坐啊!来坐啊!如果你们不喜欢凉拌沙拉,我们也可以起火换个油炸的。总之,赶快进来啊!’ 

  两位绅士早已吓得魂不附体,一张脸颤抖得像被揉皱的面纸,你看着我,我看着你,全身哆哆嗦嗦,声音都发不出来了。 

  门里响起了几声轻微的吃吃笑声,继而响起叫喊声: 
  ‘来坐啊!来坐啊!再哭下去,脸上的奶油会脱落的。啊?是,老板,菜肴马上上桌。喂!客人啊,赶快进来啊!’ 
  ‘进来啊!进来啊!我们老板已经披好餐巾,拿着刀叉,流着口水,正在等你们光临呢!’ 

  两人只会一直哭,一直哭,一直哭。 
  这时,身后突然传来一阵汪汪的狗吠声。原来是那两只白熊般的大狗破门而入。 
  钥匙孔内的眼睛,一忽儿就消失了。两只狗呜呜低吼着在房间内绕圈子,然后又汪地大叫一声,再冲向另一扇门。门"啪"地一声被冲开,两只狗一溜烟地冲进门内。 
  门那一边漆黑一片,只听见里面传来一阵"喵--嗷--咕噜咕噜--"的声音。再是一阵沙沙作响声。 
  突然,房间像烟雾般消失无踪。一看,两人竟然站在草丛中,冻得全身发抖。 

  再四下一看,原来上衣、鞋子、钱包、领带别针,东一件西一个,不是挂在树枝上,就是散落在树根上。风,飕飕吹起,枯草沙沙作响,树叶哗哗喧闹,树干隆隆吵杂。 
  两只狗又呜呜低吼着跑回来。 
  然后身后传来大喊声︰ 
  ‘先生!先生!’ 
  两人立即振奋起来,大声回喊着︰ 
  ‘喂--!喂--!我们在这里!在这里!’ 
  戴着斗笠的向导猎人,唰唰拨开草丛走了过来。 
  两人总算安下心。 
  他们吃过猎人带来的饭团后,又在途中花了十元买了野鸟,才回东京。 

  但是,即使回到东京,泡了热澡,他们那被吓得发皱的脸,却永远也不会恢复原状了。 

  --1921年11月-- 

  译注:大正时代末期的十元,可以买一百瓶牛奶、四百个面包、一百碗咖哩饭、一或二个棒球手套。


二人の若い紳士しんしが、すっかりイギリスの兵隊のかたちをして、ぴかぴかする鉄砲てっぽうをかついで、白熊しろくまのような犬を二ひきつれて、だいぶ山奥やまおくの、木の葉のかさかさしたとこを、こんなことをいながら、あるいておりました。
「ぜんたい、ここらの山はしからんね。鳥もけものも一疋も居やがらん。なんでも構わないから、早くタンタアーンと、やって見たいもんだなあ。」
鹿しかの黄いろな横っ腹なんぞに、二三発お見舞みまいもうしたら、ずいぶん痛快だろうねえ。くるくるまわって、それからどたっとたおれるだろうねえ。」
 それはだいぶの山奥でした。案内してきた専門の鉄砲打ちも、ちょっとまごついて、どこかへ行ってしまったくらいの山奥でした。
 それに、あんまり山が物凄ものすごいので、その白熊のような犬が、二疋いっしょにめまいを起こして、しばらくうなって、それからあわいて死んでしまいました。
「じつにぼくは、二千四百円の損害だ」と一人の紳士が、その犬のぶたを、ちょっとかえしてみて言いました。
「ぼくは二千八百円の損害だ。」と、もひとりが、くやしそうに、あたまをまげて言いました。
 はじめの紳士は、すこし顔いろを悪くして、じっと、もひとりの紳士の、顔つきを見ながら云いました。
「ぼくはもうもどろうとおもう。」
「さあ、ぼくもちょうど寒くはなったし腹はいてきたし戻ろうとおもう。」
「そいじゃ、これで切りあげよう。なあに戻りに、昨日きのうの宿屋で、山鳥を拾円じゅうえんも買って帰ればいい。」
うさぎもでていたねえ。そうすれば結局おんなじこった。では帰ろうじゃないか」
 ところがどうも困ったことは、どっちへ行けば戻れるのか、いっこうに見当がつかなくなっていました。
 風がどうといてきて、草はざわざわ、木の葉はかさかさ、木はごとんごとんと鳴りました。
「どうも腹が空いた。さっきから横っ腹が痛くてたまらないんだ。」
「ぼくもそうだ。もうあんまりあるきたくないな。」
「あるきたくないよ。ああ困ったなあ、何かたべたいなあ。」
べたいもんだなあ」
 二人の紳士は、ざわざわ鳴るすすきの中で、こんなことを云いました。
 その時ふとうしろを見ますと、立派な一軒いっけんの西洋造りの家がありました。
 そして玄関げんかんには

RESTAURANT
西洋料理店
WILDCAT HOUSE
山猫軒

という札がでていました。
「君、ちょうどいい。ここはこれでなかなか開けてるんだ。入ろうじゃないか」
「おや、こんなとこにおかしいね。しかしとにかく何か食事ができるんだろう」
「もちろんできるさ。看板にそう書いてあるじゃないか」
「はいろうじゃないか。ぼくはもう何か喰べたくて倒れそうなんだ。」
 二人は玄関に立ちました。玄関は白い瀬戸せと煉瓦れんがで組んで、実に立派なもんです。
 そして硝子がらすの開き戸がたって、そこに金文字でこう書いてありました。

「どなたもどうかお入りください。決してご遠慮えんりょはありません」

 二人はそこで、ひどくよろこんで言いました。
「こいつはどうだ、やっぱり世の中はうまくできてるねえ、きょう一日なんぎしたけれど、こんどはこんないいこともある。このうちは料理店だけれどもただでご馳走ちそうするんだぜ。」
「どうもそうらしい。決してご遠慮はありませんというのはその意味だ。」
 二人は戸をして、なかへ入りました。そこはすぐ廊下ろうかになっていました。その硝子戸の裏側には、金文字でこうなっていました。

「ことにふとったお方や若いお方は、大歓迎だいかんげいいたします」

 二人は大歓迎というので、もう大よろこびです。
「君、ぼくらは大歓迎にあたっているのだ。」
「ぼくらは両方兼ねてるから」
 ずんずん廊下を進んで行きますと、こんどは水いろのペンキりのがありました。
「どうも変なうちだ。どうしてこんなにたくさん戸があるのだろう。」
「これはロシア式だ。寒いとこや山の中はみんなこうさ。」
 そして二人はその扉をあけようとしますと、上に黄いろな字でこう書いてありました。

「当軒は注文の多い料理店ですからどうかそこはご承知ください」

「なかなかはやってるんだ。こんな山の中で。」
「それあそうだ。見たまえ、東京の大きな料理屋だって大通りにはすくないだろう」
 二人は云いながら、その扉をあけました。するとその裏側に、

「注文はずいぶん多いでしょうがどうか一々こらえて下さい。」

「これはぜんたいどういうんだ。」ひとりの紳士は顔をしかめました。
「うん、これはきっと注文があまり多くて支度したくが手間取るけれどもごめん下さいとういうことだ。」
「そうだろう。早くどこかへやの中にはいりたいもんだな。」
「そしてテーブルにすわりたいもんだな。」
 ところがどうもうるさいことは、また扉が一つありました。そしてそのわきに鏡がかかって、その下には長いのついたブラシが置いてあったのです。
 扉には赤い字で、

「お客さまがた、ここでかみをきちんとして、それからはきもの
 のどろを落してください。」

と書いてありました。
「これはどうももっともだ。僕もさっき玄関で、山のなかだとおもって見くびったんだよ」
「作法の厳しい家だ。きっとよほどえらい人たちが、たびたび来るんだ。」
 そこで二人は、きれいに髪をけずって、くつの泥を落しました。
 そしたら、どうです。ブラシを板の上に置くやいなや、そいつがぼうっとかすんで無くなって、風がどうっと室の中に入ってきました。
 二人はびっくりして、たがいによりそって、扉をがたんと開けて、次の室へ入って行きました。早く何か暖いものでもたべて、元気をつけて置かないと、もう途方とほうもないことになってしまうと、二人とも思ったのでした。
 扉の内側に、また変なことが書いてありました。

「鉄砲と弾丸たまをここへ置いてください。」

 見るとすぐ横に黒い台がありました。
「なるほど、鉄砲を持ってものを食うという法はない。」
「いや、よほど偉いひとが始終来ているんだ。」
 二人は鉄砲をはずし、帯皮を解いて、それを台の上に置きました。
 また黒い扉がありました。

「どうか帽子ぼうし外套がいとうと靴をおとり下さい。」

「どうだ、とるか。」
「仕方ない、とろう。たしかによっぽどえらいひとなんだ。奥に来ているのは」
 二人は帽子とオーバーコートをくぎにかけ、靴をぬいでぺたぺたあるいて扉の中にはいりました。
 扉の裏側には、

「ネクタイピン、カフスボタン、眼鏡めがね財布さいふ、その他金物類、
 ことにとがったものは、みんなここに置いてください」

と書いてありました。扉のすぐ横には黒塗りの立派な金庫も、ちゃんと口を開けて置いてありました。かぎまでえてあったのです。
「ははあ、何かの料理に電気をつかうと見えるね。金気かなけのものはあぶない。ことに尖ったものはあぶないとう云うんだろう。」
「そうだろう。して見ると勘定かんじょうは帰りにここではらうのだろうか。」
「どうもそうらしい。」
「そうだ。きっと。」
 二人はめがねをはずしたり、カフスボタンをとったり、みんな金庫のなかに入れて、ぱちんとじょうをかけました。
 すこし行きますとまたがあって、その前に硝子がらすつぼが一つありました。扉にはう書いてありました。

「壺のなかのクリームを顔や手足にすっかり塗ってください。」

 みるとたしかに壺のなかのものは牛乳のクリームでした。
「クリームをぬれというのはどういうんだ。」
「これはね、外がひじょうに寒いだろう。へやのなかがあんまり暖いとひびがきれるから、その予防なんだ。どうも奥には、よほどえらいひとがきている。こんなとこで、案外ぼくらは、貴族とちかづきになるかも知れないよ。」
 二人は壺のクリームを、顔に塗って手に塗ってそれから靴下をぬいで足に塗りました。それでもまだ残っていましたから、それは二人ともめいめいこっそり顔へ塗るふりをしながら喰べました。
 それから大急ぎで扉をあけますと、その裏側には、

「クリームをよく塗りましたか、耳にもよく塗りましたか、」

と書いてあって、ちいさなクリームの壺がここにも置いてありました。
「そうそう、ぼくは耳には塗らなかった。あぶなく耳にひびを切らすとこだった。ここの主人はじつに用意周到しゅうとうだね。」
「ああ、細かいとこまでよく気がつくよ。ところでぼくは早く何か喰べたいんだが、どうも斯うどこまでも廊下じゃ仕方ないね。」
 するとすぐその前に次の戸がありました。

「料理はもうすぐできます。
 十五分とお待たせはいたしません。
 すぐたべられます。
 早くあなたの頭にびんの中の香水をよくりかけてください。」

 そして戸の前には金ピカの香水の瓶が置いてありました。
 二人はその香水を、頭へぱちゃぱちゃ振りかけました。
 ところがその香水は、どうものようなにおいがするのでした。
「この香水はへんに酢くさい。どうしたんだろう。」
「まちがえたんだ。下女が風邪かぜでも引いてまちがえて入れたんだ。」
 二人は扉をあけて中にはいりました。
 扉の裏側には、大きな字で斯う書いてありました。

「いろいろ注文が多くてうるさかったでしょう。お気の毒でした。
 もうこれだけです。どうかからだ中に、壺の中の塩をたくさん
 よくもみ込んでください。」

 なるほど立派な青い瀬戸の塩壺は置いてありましたが、こんどというこんどは二人ともぎょっとしてお互にクリームをたくさん塗った顔を見合せました。
「どうもおかしいぜ。」
「ぼくもおかしいとおもう。」
沢山たくさんの注文というのは、向うがこっちへ注文してるんだよ。」
「だからさ、西洋料理店というのは、ぼくの考えるところでは、西洋料理を、来た人にたべさせるのではなくて、来た人を西洋料理にして、食べてやるうちとこういうことなんだ。これは、その、つ、つ、つ、つまり、ぼ、ぼ、ぼくらが……。」がたがたがたがた、ふるえだしてもうものが言えませんでした。
「その、ぼ、ぼくらが、……うわあ。」がたがたがたがたふるえだして、もうものが言えませんでした。
げ……。」がたがたしながら一人の紳士はうしろの戸をそうとしましたが、どうです、戸はもう一分いちぶも動きませんでした。
 奥の方にはまだ一枚扉があって、大きなかぎ穴が二つつき、銀いろのホークとナイフの形が切りだしてあって、

「いや、わざわざご苦労です。
 大へん結構にできました。
 さあさあおなかにおはいりください。」

と書いてありました。おまけにかぎ穴からはきょろきょろ二つの青い眼玉めだまがこっちをのぞいています。
「うわあ。」がたがたがたがた。
「うわあ。」がたがたがたがた。
 ふたりは泣き出しました。
 すると戸の中では、こそこそこんなことを云っています。
「だめだよ。もう気がついたよ。塩をもみこまないようだよ。」
「あたりまえさ。親分の書きようがまずいんだ。あすこへ、いろいろ注文が多くてうるさかったでしょう、お気の毒でしたなんて、間抜まぬけたことを書いたもんだ。」
「どっちでもいいよ。どうせぼくらには、骨も分けてれやしないんだ。」
「それはそうだ。けれどももしここへあいつらがはいって来なかったら、それはぼくらの責任だぜ。」
「呼ぼうか、呼ぼう。おい、お客さん方、早くいらっしゃい。いらっしゃい。いらっしゃい。おさらも洗ってありますし、菜っ葉ももうよく塩でもんで置きました。あとはあなたがたと、菜っ葉をうまくとりあわせて、まっ白なお皿にのせるだけです。はやくいらっしゃい。」
「へい、いらっしゃい、いらっしゃい。それともサラドはおきらいですか。そんならこれから火を起してフライにしてあげましょうか。とにかくはやくいらっしゃい。」
 二人はあんまり心を痛めたために、顔がまるでくしゃくしゃの紙屑かみくずのようになり、お互にその顔を見合せ、ぶるぶるふるえ、声もなく泣きました。
 中ではふっふっとわらってまたさけんでいます。
「いらっしゃい、いらっしゃい。そんなに泣いては折角せっかくのクリームが流れるじゃありませんか。へい、ただいま。じきもってまいります。さあ、早くいらっしゃい。」
「早くいらっしゃい。親方がもうナフキンをかけて、ナイフをもって、舌なめずりして、お客さま方を待っていられます。」
 二人は泣いて泣いて泣いて泣いて泣きました。
 そのときうしろからいきなり、
「わん、わん、ぐゎあ。」という声がして、あの白熊しろくまのような犬が二ひきをつきやぶってへやの中に飛び込んできました。鍵穴かぎあなの眼玉はたちまちなくなり、犬どもはううとうなってしばらく室の中をくるくるまわっていましたが、また一声
「わん。」と高くえて、いきなり次の扉に飛びつきました。戸はがたりとひらき、犬どもは吸い込まれるように飛んで行きました。
 その扉の向うのまっくらやみのなかで、
「にゃあお、くゎあ、ごろごろ。」という声がして、それからがさがさ鳴りました。
 室はけむりのように消え、二人は寒さにぶるぶるふるえて、草の中に立っていました。
 見ると、上着やくつ財布さいふやネクタイピンは、あっちのえだにぶらさがったり、こっちの根もとにちらばったりしています。風がどうといてきて、草はざわざわ、木の葉はかさかさ、木はごとんごとんと鳴りました。
 犬がふうとうなってもどってきました。
 そしてうしろからは、
旦那だんなあ、旦那あ、」と叫ぶものがあります。
 二人はにわかに元気がついて
「おおい、おおい、ここだぞ、早く来い。」と叫びました。
 簔帽子みのぼうしをかぶった専門の猟師りょうしが、草をざわざわ分けてやってきました。
 そこで二人はやっと安心しました。
 そして猟師のもってきた団子だんごをたべ、途中とちゅうで十円だけ山鳥を買って東京に帰りました。
 しかし、さっき一ぺん紙くずのようになった二人の顔だけは、東京に帰っても、お湯にはいっても、もうもとのとおりになおりませんでした。



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